はじめてモロッコ美容に興味を持ったのは、1990年代のこと。
当時、フランスでハマムというアラブ式蒸気公衆風呂がブームになっていて、女性誌などでよく紹介され、それに伴い、モロッコ美容の情報も増えました。
その頃は、アルガンオイルもガスールも、どんなものなのかまったく知らず。
でも、「なんだか良さそう」と感じたのが、モロッコ美容にはまったきっかけでした。
初めてモロッコへ行った1998年2月、モロッコ美容で使うアイテムが、町の市場(スーク)のスパイス屋で買えるのに驚き!
ローズウォーターとオレンジフラワーウォーターは飲料水のような瓶で売っているし、黒石けん(サボンノワール)は量り売りでビニール袋に入れて手渡されました。
コホル(マスカラ&アイライナー)もアケール(口紅&頬紅)から、ガスール、ヘナ(ヘンナ)、軽石、垢すり手袋まで、市場のスパイス屋で全部そろうのです。
「美容専門店」を覗いてみたい、と行ったのが、マラケシュの「スパイスのバラダイス」という店名のショップ。
ガランとした殺風景な店内で、壁に備えた棚にはハーブやカラフルな粉が入った薬瓶がびっしり。
中央のテーブルに見本品がおいてあり、店員が説明してくれます。
店員は男性で、どち らかというと”美容”とは縁がない雰囲気…。
説明を聞いても、耳慣れない単語が多く、よくわからかったのですが。
試しに購入したのは、湿疹に効くというサフランとアルガンオイルの軟膏、鼻づまりを治すカユプテオイルの軟膏、アルガンオイル、レモンオイル、ローズオイル、アンバーなど。
やせるお茶も買いました。
バラの花、オリーブおよびユーカリの葉をブレンドしたハーブティー。
飲み方も教えてもらったのですが、残念ながら、効果はみられませんでした~。
あれから20年。
2010年の5月末、モロッコのラバトに行ってきました。
短時間でしたが、旧市街のスーク(市場)で伝統的なモロッコ美容アイテムを物色したり、洒落たオーガニック系ショップの製品に目が釘付けになったり……。
モロッコにあるような、食料品とコスメが並ぶ店は、日本ではあまり見かけません。
こうした店は、アラビア語でアッタールといい、かつてはアラビア医学の知識を備えた薬種商でした。
もっと時代をさかのぼると、中国、インド、アラビア半島などで香辛料の交易を行っていた商人だったのです。
香辛料も伝統的な生薬も、そもそもは同じ植物ということもあり、一緒に扱うようになったそうです。
ですから、植物や鉱物由来のコスメが、スパイス屋においてあっても、不自然ではないのです。
スークを歩いていたら、こうした材料ばかりが所狭しと並んで5軒ばかり集まった一角を発見しました。
「アルガンオイルが安いよ」「乾燥肌にはこのクリーム!」「これは髭剃り後の止血に効果的」などと説明してくれるのは、ふつーのオジさん。
野菜を買うように、オジさんと相談しながら美容材料を手に入れるというのが、モロッコの美容ショッピングの楽しみです。
スパイス屋の店主たちは、香辛料や薬草の知識を持ち、客の相談にのってくれます。
たまには「?」ということもあるのですが、行くたびに新しい発見ができる場所です。
アラブ地域は植物療法の生誕地ともいえ、ハーブやスパイスが日常生活に密着しています。
モロッコも、料理や美容をはじめ、衣食住にハーブやスパイスを取り入れています。
スークでもハーブ&スパイス屋は大人気。
ラバトのスークで見かけた店には、大勢の人がむらがっていました。
新鮮なミントが山積みされ、数種のハーブが店いっぱいに並びます。
店の人にあれこれ質問していたら、買い物客の女性にクスクス笑われてしまいました。
「そんなことも知らないの?」と思ったかもしれません。
ハーブを活用するモロッコ美容は奥が深いのです。