美容の起源をさかのぼると、古代エジプトにたどりつきます。
フランス・パリのルーヴル美術館の化学者が、古代エジプトの墓から発見された白粉(パウダー)を分析したところ、古代エジプト時代の化粧品は高度な技術で作られていることがわかったそうです。
白粉を構成するベースの原料は、白鉛鉱と方鉛鉱の2つの鉛。
さらに、ラウリオンとフォスゲナイトという珍しい成分も含まれ、それらは人為的に作られた合成化合物であると判明しました。
カラー調整もしていたそう。
ラウリオンとフォスゲナイトの混合物に、白鉛鉱を加えたらナチュラルな肌色、方鉛鉱を混ぜて日焼け肌向けに、という具合。
エジプトでは、紀元前からボディケアも行われていました。
そのカリスマ的存在といえば、古代エジプトの女王クレオパトラでしょう。
クレオパトラは、その麗しい姿をキープするために、さまざまな美容法が生み出しました。
たとえば……。
・ロバのミルクで入浴し、シルクのような柔らかい肌を保っていた
・はちみつのパックを欠かさなかった
・アンバーグリスをスキンケアに愛用した
・爪をヘナ(へンナ)で色づけていた
・水、ハチミツ、砂糖、レモンを原料にしたキャラメル脱毛剤を使用していた
さらに、クレオパトラは、昔は王族しか口にできなかった野菜モロヘイヤを愛食し、ハイビスカスティーも大好きだったと伝えられています。
モロヘイヤはビタミンが豊富で、エジプトでは葉野菜のなかで最も栄養があるといわれています。
クエン酸を含むハイビスカスティーは、高血圧を抑え、疲労回復の効果があります。
また、クレオパトラは、若々しさを取り戻すというサフランも取り入れていました。
恋の媚薬として、お風呂をサフランで香りづけしていたそうです。
クレオパトラにまつわる逸話は数多く、「ローマ帝国のアントニウスを自宅に迎えるときに、部屋中にバラの花びらを敷き詰めた」というエピソードはよく知られています。
野心家のクレオパトラは、自分の美しさの維持に熱心だっただけでなく、植物の香りで心身を癒す必要にも迫られていたのかもしれませんね。
なんだか、現在の女性の状況に似ているようです。
アロマオイルのルーツは古代エジプトの香油
芳香植物を油に混ぜた香油は、古代エジプトで作られはじめたといわれています。
アラブ地域では、皮膚の荒れを防いだり、体臭をまぎらしたりするために、香油が普段から用いられていたそうです。
この香油は、西洋のアロマテラピーの原点といえるでしょう。
初期のころの香油は、一種類の香料で作っていたのですが、数種類を組み合わせると香りが複雑になり、効用も高まることがわかり、次第に洗練されていきました。
クレオパトラの若さを保つ秘薬は、スイートアーモンドオイルやオリーブオイル、パームオイル、ココナッツオイルに、さまざまな芳香植物を煮詰めて抽出したエッセンスを加えた香りのオイル。
入浴後、このオイルでマッサージをしていたといいます。
クレオパトラお気に入りは、バラとスミレの香りを加えたスイートアーモンドオイル。
それとは別に、足のお手入れ用に特別なブレンドのオイルを使っていたといいます。
クレオパトラ特製のフットケアオイルは、スイートアーモンドオイルに、ネロリ、ヘンナ、シナモンを混ぜたもの。
地中海沿岸で栽培されるスイートアーモンドの木は、”処女の美しさ”と”多産”の象徴として知られています。
脂肪、たんぱく質、ナトリウム、ビタミンA、B、Eを含むスイートアーモンドオイルは、リラックス、保湿、栄養、鎮静の働きがあるといれ、スキンケア、特に、敏感肌に向いています。
ヘンナとシナモンには水虫を治す作用があり、さらにシナモンには血行促進、ネロリにはリラックス効果があるので、まさに理想的なお手入れ法だったのでしょう。
香油でマッサージをする習慣は古代ローマに伝わり、紀元前後の「ローマの平和」時代には、香油を楽しむのが趣味として大流行しました。
もちろん、香油の伝統はいまでもアラブの国々に受け継がれています。