ここで3人の女性たちと大宴会。そこに、3人の片目が見えない僧侶が訪ねてきます。
この3人は、それぞれの生い立ちを語るのですが、2番目の僧侶のお話のなかに、ハマムのシーンが登場します。
王子だった僧侶は、旅先で強盗に追われ、たどりついた町できこりの手伝いをします。
ある日、森の中で地下へつづく階段を見つけ、降りていくと、鬼神にとらわれた王女が住んでいました。
鬼神は10日おきにここにやってくるのですが、鬼のいぬまに、二人は甘いひと時を過ごします。
女性は男性の手を引いて、ハマムへ。
「弓形の入り口を通り、つきあたりに、快く柔らかい空気がたちこめた」浴室で、二人は一緒に入浴します。
その後、台に並んで座って休憩。
そのとき、女性は麝香入りのシャーベットをすすめ、男性の前に豪勢なお菓子を置きました。
そして、これらの品を食べながら、世間話をつづけたのです。
3目の僧侶も王子で、数奇な運命をたどります。
羊の皮をかぶった男は大鷲にくわえられ、山の頂上へ。
食べられる寸前に逃げ出し、壮麗な宮殿にたどりつきます。
伽羅と白檀(サンダルウッド)の木で造られた99の門に囲まれ、各部屋には黄金とダイヤモンドをちりばめた黒檀の戸がついていました。
男性は、ここに住む40人の乙女に迎えられます。
そして、次のような歓待を受けるのでした。
ひとりが、お湯と布で足を洗い、もうひとりが、黄金の水差しに入った香水を手に注ぎ、次の女性が、絹の着物と金銀の糸で刺繍された帯で身支度を調え、4番目が、さまざまな花の香りの美味な飲み物をすすめる。
そして、夜になると、太陽に照らされたかのように部屋を明るくする数多くのロウソクが運ばれ、食卓には豪華な料理が並びました。
食事の最中、乙女たちは楽器を奏でて歌い、踊ります。
夜が更けると、男性は40人の乙女とかわるがわるベッドをともにし、朝になると女性に伴われハマムに行き、全身を洗ってもらい、力をこめてマッサージをしてもらいます。
さて、40人の乙女にちやほやされて宮殿に滞在しているうちに、大晦日になりました。
腹違いの姉妹である乙女たちは、それぞれの両親に逢いに行くために、40日間宮殿を留守にします。
すべての部屋の鍵を男性に預けるのですが、「庭の奥の銅の扉は開けないでください。さもなければ、必ず大きな不幸が起こるでしょう」と忠告しました。
男性は、部屋の扉をひとつひとつ開けていきます。
もちろん、誘惑に駆られて、最後の部屋も。
その銅の扉を開けて入ってみると、床いっぱいにサフランがまき散らしてある、広々とした部屋でした。
龍涎香(アンバーグリス)とその他の香料を炊いた薫香の香炉がおいてあり、香りのオイルを入れた金銀の立派なランプがいくつも光を放っています。
香炉とランプの間に、すばらしい黒い馬が一頭いました。
馬の水のみ桶には、ローズウォーターで香りをつけた清水がはられています。
男は馬を庭につれだし、乗ってみると、馬は翼を広げて空中高く舞い上がります…。
しかし、乙女の言葉通り、左目を失うという不幸が訪れたのでした。
このお話には数々の香りが登場します。
伽羅と白檀(サンダルウッド)の木、黒檀の戸、黄金の水差しに入った香水、花の香りの美味な飲み物、床いっぱいにサフラン、龍涎香(アンバーグリス)とその他の香料を炊いた薫香の香炉、香りのオイルを入れた金銀の立派なランプ、ローズウォーターで香りをつけた清水…。
ページからエキゾチックで濃厚な香りが漂ってきそうです。
香りを想像しながら、千一夜物語を読むのも楽しいですね。