甘くスパイシーな香りのアニスは、何千年もの間、料理と薬用の両方に利用されてきました。
アニスは地中海沿岸地域ではおなじみの食材で根も葉も料理に使いますが、スパイスとして用いられるのはアニスシードと呼ばれる、果実のような種子です。
モロッコからエジプトに至る北アフリカでは、主にケーキや料理の風味づけにアニスを加えます。

また、フランスのパスティス、トルコのラクをはじめ、スペイン、イタリア、ギリシャなどではアニスシード(種子)から作ったリキュールが一般的に楽しまれています。
アニスは最古の薬用植物なかの1つで、伝統医学の治療薬とされてきた長い歴史があります。
アニスシードは古代エジプト時代にミイラを作る際の消臭に使われ、古代ギリシャではよく知られた薬用植物でした。
古代ローマ時代には、医師のディオスコリデスが「薬物誌」で、博物学者のプリニウスが「博物誌」で、アニスの薬効について記しています。
伝統的な文献には、悪夢、憂鬱、発作、てんかんの治療にアニスを推奨する記載がみられます。また、アニスシードは片頭痛や利尿の薬、芳香剤、消毒剤としても使用されてきました。
現代においても、イラン、北アフリカ、トルコなどの多くの人々が、アニスを用いた治療法を実践しています。
たとえば、モロッコの中部地域では、消化器系、呼吸器系、神経系、婦人科系疾患の治療に、南部地域では、主に腎盂腎炎と膀胱炎といった尿路感染症の治療に使っています。
美容業界では、歯磨き粉や口腔衛生製品、傷のクリームや手荒れ用クリームなどに配合されています。
アニスの特徴
南西アジア、中東、地中海地域が原産といわれ、現代では、北アフリカ、エジプト、ギリシャ、トルコ、イタリア、スペイン、ドイツ、ブルガリア、ロシア、インド、メキシコなど主に温暖な地域で商業用に多く栽培されています。
アニスは、高さ30~50㎝の一年草で、明るい緑色の羽のような小葉があり、可憐な白い花が咲きます。緑っぽい黄色の種子をつけます。
学名:Pimpinella anisum L.
科名:セリ科
使用部位:葉、種子
開花時期:7月~8月
収穫時期:7月~9月
有効成分(種子)
アネトール
フェノール類
フラボノイド
テルペン
精油(アニスアルデヒド など)
アニスの肌と髪への美容効果
アニスは抗炎症、抗酸化といった作用があり、荒れた肌をなめらかにするなど、スキンケアやヘアケアにも適しています。
特にアニスシードのインフュージョン(煎剤)は、軽い皮膚炎症を緩和するのに有効です。
アニスシードは皮脂分泌を調整する働きに加え、収れん作用もあり、毛穴を引き締め、オイリー肌を改善するのに役立ちます。
アニスはまた、しみやそばかす、くすみを軽減し、透明感のある肌にするとされています。
抗菌作用にすぐれたアニスシードは、傷の回復を早める特性でも知られます。アニスシードのインフュージョンは、傷口の温湿布になります。
アニスは筋弛緩作用があり、肩こりや眼精疲労を緩和する効果が期待できます。
さらに、歯磨きにも向き、アニスシードの粉末に木炭の粉末とレモン汁を少し加えて作る歯磨き粉は、歯の汚れを落として白くするといいます。
アニスは口臭を消すのにも使われます。
アニスの肌と髪への使い方
アニスの葉は生かドライハーブで、種子はドライハーブ(アニスシード)か精油という形で使うことができます。
アニスの葉の生かドライハーブとアニスシードは、ハーブティーとして飲んだり、熱湯で煎じたインフュージョンや、オイルに漬けたインフューズドオイルを肌や髪につけたりして、使うことができます。
スキンケア
目の下のくまを軽減します。
ヘルスケア
目の軽い炎症を緩和します。
アニスの効能
アニスは、抗けいれん、鎮痛、抗炎症、抗酸化、抗菌、抗ウイルス、抗真菌、抗カビ、殺虫といった作用が認められています。
アニスに含まれる香り成分アネトールは、消化促進、駆風、胃腸のけいれん緩和、便秘の改善という働きがあります。
免疫機能を調整したり、糖尿病のリスクを軽減したりする特性も明らかになっています。
また、月経困難症や更年期のホットフラッシュの緩和に有効です。
