ショウガは日本料理に欠かせない食材ですが、古代から薬用植物として使用されてきた長い歴史があります。
属名の「Zingiber」はギリシャ語の「zingiberis」からきており、「角形の」という意味のサンスクリット語(Sringavera)が語源といわれています。
ショウガは何世紀にもわたって、世界三大伝統医学といわれる中国医学、インド・スリランカのアーユルヴェーダ、アラブ・イスラムのユナニでさまざまな病気の治療のための重要な成分として使用されてきました。
ショウガを使った民間療法は他にも、古代ギリシャと古代ローマ、東南アジア、メキシコ、ブラジル、オーストラリア、アフリカ、台湾、日本、ジャマイカなどで行われてきました。
アラビア医学(ユナニ)にとって重要な古典となっている、西暦1世紀の半ばに書かれた『薬物誌』にも、インド由来のショウガが記されています。
トルコ出身で、ローマ皇帝ネロの侍医だったディオスコリデスが著したこの本には、900種以上の薬物が収載されています。
インドでは約3000年前にショウガの栽培が始まったといわれ、古代ギリシャ・ローマ時代、インドのコショウやシナモン、ショウガは有名でした。
その後のイスラム文明の繁栄時期に、インド産スパイスや薬草が多く流通されるようになったといいます。
ショウガは、ヨーロッパ人によって栽培された最初の東洋スパイスのうちのひとつであり、中世で最も人気のあるスパイスでした。ヨーロッパ北部には、アラビア商人から入手した古代ローマ人によって導入されたといわれています。
ショウガの薬効は、9世紀にはドイツとフランスで、10世紀にはイギリスで知られるようになりました。
ショウガは古代以来、喘息、咳、関節炎、リウマチ、捻挫、筋肉痛、痛み、喉の痛み、けいれん、便秘、消化不良、吐き気、嘔吐、高血圧、認知症、発熱、感染症、頭痛など幅広い病気に使用されてきました。
中国では、最古の薬物書『神農本草経』にショウガが記されており、紀元前4世紀の中国の記録によると、ショウガは腹痛、下痢、吐き気、コレラ、出血、リュウマチ、歯痛などのさまざまな症状の治療に使用されていたとあるそうです。
伝統医学だけでなく、現代の中国医学においても、ショウガは重要な漢方薬としてを処方されています。
欧州医薬品庁のハーブ医薬品委員会(HMPC)は、乗り物酔いの吐き気や嘔吐を防いだり、膨満感や鼓腸を含む胃腸の軽度の不調症状を治療したりするためにショウガを使用できると結論づけています。
ショウガの特徴
正確な原産地は判明していませんが、東アジアおよび南アジアといわれ、インドや中国では古くから栽培されていた。現在のショウガ生産国は、ナイジェリア、インド、中国、インドネシア、バングラデシュなどがあり、それ以外にも世界各地で栽培されています。
ショウガは高さ50~100㎝まで成長する多年草です。地下に根茎があり、葉は細く披針形で、葉柄が折り重なるように巻いて茎のようにのびます。花は黄緑色の口唇形で、小豆色の斑点があります。
学名:Zingiber officinale
科名:ショウガ科
使用部位:根茎
開花時期:夏
収穫時期:夏~秋
有効成分:
フェノール類(ジンゲロール、ショウガオール、ジンゲロン)
フラボノイド(アピゲニン、ミリセチン)
没食子酸
ミネラル(鉄、マグネシウム、カルシウム)
ビタミンC
精油
ショウガの肌と髪への美容効果
ショウガに含まれる辛み成分のジンゲロールとショウガオールには、抗酸化作用と抗炎症作用があることが知られ、皮膚細胞の老化を遅くし、肌と髪を健やかに保つ働きがあります。
メラニン生成を防ぐ作用でも知られ、シミやソバカスを薄くするのに役立ちます。
抗菌、抗感染作用があり、大気汚染や紫外線などの刺激や汚れから肌や髪を守ります。
ショウガは、エキゾチックな香りのオードトワレなどにも活用されます。
ショウガの肌と髪への使い方
ショウガは、根茎の生を、ハーブティーとして飲んだり、熱湯で煎じたインフュージョンを肌や髪につけたりして、使うことができます。
スキンケア
しみやそばかすを薄くします。
ヘアケア
傷んだ髪を元気にします。
ショウガの効能
ショウガは、抗菌、鎮痛、抗炎症、抗酸化、免疫調節、神経保護、制吐、抗糖尿病、抗がん、抗腫瘍、抗高脂血症、抗高血圧、抗高コレステロール血症、抗アルツハイマー病、殺虫作用が認められています。
ショウガに豊富に含まれるジンゲロールは、抗酸化、鎮痛、抗炎症、解熱などのさまざまな薬効を持っています。
風邪の症状に効果があり、頭痛、吐き気、関節炎、けいれん、捻挫、喉の痛み、リュウマチ、筋肉痛、嘔吐、便秘、消化不良、高血圧、認知症、発熱、感染症などに有効とされます。
また、ショウガは月経周期を調整し、月経困難症を軽減することが明らかになっています。