乳香は、カンラン科の樹木ボスウェリアの幹の切り込みからにじみ出る、薄黄色か黄褐色の樹脂です。
乳香は「オリバナム」と呼ばれ、アラビア語の「ミルク(乳)」を意味する語「ルバーン」の派生語に由来します。
その名の通り、乳香は、少しヨーグルトっぽさが加わった濃厚でエキゾチックな香りが特徴です。
アラビア半島南部が産地の乳香と没薬は、薫香に欠かせない最高級品でした。
古代エジプトでは、乳香は神に属すると考えられていたそうです。
紀元前15世紀、エジプトの女王は、乳香と没薬の産地へ遠征船を派遣したといい、遠征隊が乳香と没薬を持ち帰った様子は、ルクソールの神殿のレリーフに刻まれています。
古代ギリシャ・ローマでも、乳香と没薬は一級品の香料でした。
前5世紀のギリシャ人ヘロドトスの著書『歴史』よると、バビロンのカルデア人は「ゼウス・ベロス」(バール神)の祭礼のとき、その神殿がある神域の大祭壇で、毎年1000タラントンの乳香を焚くことになっている、と記されています。
また、アラビア人はダレイオス1世の治下、ペルシャ帝国に対して毎年1000タラントンの乳香を納入している、とも書かれています。
1タラントンは26.196kg、あるいは37.44kgにあたり(前者はアッティカ単位、後者はアイギナ単位での換算による)、いずれにしても大量の乳香が消費されていたことがわかります。
乳香は太古の昔から、アフリカ、中国、インド、中東といった多くの国で、さまざまな病気、特に炎症性の病気を防ぎ、治療するために使われてきました。
古代エジプトでは、手足の痛みを緩和する医薬品として用いられていたそうです。
現在、乳香の有効成分が明らかになり、いくつかの効能は科学的に証明されています。
乳香に含まれる精油は、化粧品や香水、アロマテラピーに用いられています。
乳香の特徴
乳香はカンラン科ニュウコウ属の樹木ボスウェリアの樹皮から産出する樹脂です。
ボスウェリアは、インド、アフリカ、アラビア半島が原産で、アラビア半島南部オマーンのズファール地方、イエメンのハアドラマウト地方、東アフリカのソマリア北東部でみられます。
学名:Boswellia carterii
科名:カンラン科
使用部位:樹脂
別名:オリバナム、フランキンセンス
有効成分:
ボスウェリア酸
精油(モノテルペン、ジテルペン など)
乳香の肌と髪への美容効果
乳香は、しわを減らし、肌のトーンを明るくする働きがあることで知られています。
肌の赤みと荒れ、日焼けによるダメージを改善し、なめらかにする効果が期待できます。
肌をリラックスさせ、柔らかい、若々しい素肌を保つのに役立ちます。
乳香の効能
乳香に含まれるボスウェリア酸は、抗炎症作用、抗がん作用、抗菌作用などがあると実証されています。
強い抗炎症作用があるテルペンを含み、関節炎、関節リュウマチ、関節痛、腱鞘炎、潰瘍性大腸炎、炎症性腸の病気などに有効です。
過敏性腸症候群のように不安などが原因の腹痛も緩和します。
昔から気管支炎と喘息の治療に使われており、呼吸器系のトラブルを改善することが示されています。
口腔内の衛生を向上し、歯周病を防ぐともいいます。
また、生理痛や生理不順にも使うことができます。
神殿の祭壇で焚かれていた乳香には、心をなごませ、平常心を取り戻す働きで知られています。