日本で菖蒲といえば、菖蒲園などに咲く青紫の花をイメージするかもしれませんが、それらはアヤメ科のハナショウブで、薬用植物のショウブとは違います。
端午の節句の菖蒲湯に入れるショウブは、池沼や溝など浅い水中に育つ、肉厚の根茎をもつ香りのよい植物です。
ショウブは、2000年以上にわたって、インドの伝統医学アーユルヴェーダおよび中国医学でさまざまな病気の治療のための伝統的な薬用植物として使用されてきました。
中国最古の薬物書『神農本草書』には、てんかん、動悸、腹痛、打撲、物忘れなどの治療に用いられ品種として記録されています。
インドのアーユルヴェーダ伝統医学では、鎮痛、解熱、強壮、抗肥満などの目的で、神経、胃腸、呼吸器、腎臓、肝臓など幅広い疾患の治療に使用されてきました。
インドの農村部では、子どもたちの言語障害の矯正と記憶力の向上、片頭痛、耳痛、耳鳴りの治療に用いるそうです。
中国やインドだけでなく、ショウブは世界各地の民間療法で活用されています。
ショウブは中国の少数民族の間で最もよく使われる薬用植物の1つで、29の少数民族が病気を軽減するために利用しているそうです。
たとえば、赤痢、虫垂炎、目の腫れ、月経不順、慢性気管炎、食欲不振、腸炎、腹痛、傷などの治療をショウブで実践しているといいます。
ショウブの科学的研究は1950年代からはじまり、多くの薬効が明らかになっています。
また、香りのいいショウブは、石けん、バスムース、クリームといったボディケア製品に使われ、精油は、香水やデオドラント、特に男性用製品などに配合されています。
ショウブの特徴
インド、カザフスタン、中国、日本を含む北半球と南半球の温帯および亜熱帯に広く分布し、アジア、ヨーロッパ、アメリカ大陸の温暖な地域でみられます。沼地や湿った土地によく育ちます。
ショウブは、長さ5〜6 cmの肉厚で芳香のある繊維質の根茎をもつ、半常緑の多年草です。ツヤのある緑色の線形または剣形の葉は葉は分厚く頑丈で、長さ90~100㎝に達します。つややかな茎が何本かの葉の中央からまっすぐ伸び、先端近くに穂状の花を形成します。
学名:Acorus calamus L.
科名:ショウブ科
別名:英語でスイートフラッグ
使用部位:根茎
開花時期:6月~7月
収穫時期:秋
有効成分:
フェニルプロパノイド
セスキテルペノイド
アルカロイド
フェノール類
フラボノイド
ショウブの肌と髪への美容効果
ショウブは抗酸化、抗炎症、抗菌といった作用があり、湿疹、皮膚炎、ただれなどの皮膚疾患を改善します。美白効果も期待できます。
収れん作用があり、頭皮を引き締め、脱毛を防ぐのに役立ちます。
創傷治癒作用でも知られ、傷の治りを早めます。
また、病原菌となる物質を取り除く働きがあるといわれ、歯茎の出血や口臭予防などの衛生用製品にも使われます。
ショウブは肥満のリスクを軽減するともいわれています。
ショウブの肌と髪への使い方
ショウブの根茎と葉は、生かドライハーブ、精油という形で使うことができます。
ショウブの根茎と葉の生かドライハーブは、ハーブティーとして飲んだり、熱湯で煎じたインフュージョンや、オイルに漬けたインフューズドオイル、粉末、ペーストにして肌や髪に使うことができます。
ショウブのインフュージョン(煎剤)は肌や髪のローションになります。
ボディケア
血行を促進して足のむくみを軽減します。
ショウブの効能
ショウブは、降圧、抗酸化、抗炎症、抗菌、免疫調節、抗けいれん、神経保護、抗うつ、心臓保護、抗糖尿病、抗肥満などの作用が認められています。
風邪、咳、発熱、消化不良などの胃腸疾患、呼吸器疾患、下痢、頭痛、てんかん、糖尿病、高血圧、血栓症、月経困難症、うつ病など、神経系、消化器系、心血管系、その他の疾患の治療に役立ちます。