モロッコの陶磁器の歴史は古く、それゆえ、職人は高いプライドを持っているそうです。
陶工のアトリエは神聖な場所とされ、他人が使用すると、昼に仕上げた陶器が夜に全て砕けてしまうという言い伝えがあります。
ラバト近郊、サレにあるウリヤ工芸センター(le Centre d’Oulja)には、陶器をはじめ、さまざまな工芸品が並びます。
アトリエが公開されていて、職人の作業を直接見ることができます。男性の職人がモクモクと陶器を製作していました。質問に答えたり、説明してくださるそうです。ということを後で知りました。
ショップには、あらゆる種類の魅力的な陶磁器がそろっています。
目移りしたのですが、ラーメンどんぶりにぴったりのピンクのどんぶりと、小さなタジン鍋を購入しました。
ここにはカフェやギャラリーもあり、雑貨好きにはおすすめのスポットです。
また、マラケシュ南部のウリカ谷の道路沿いにある土産屋にも、色鮮やかな陶器がところ狭しと並んでいました。
陶器は地域によってスタイルに違いがあります。
ベルベルの陶器は、紀元前30世紀のエーゲ海の陶器に類似するといわれています。
ろくろを使わず、女性が型作りをし、太陽の下で乾燥した後、野外で焼きます。
焼く前に、筆で飾りを入れたタイプもあります。
蓋つきの両手鍋、中央部がふくらんだポット、細い脚つきのカップ、壷、水差し、アンフォラ(古代ギリシャの壷)風の花瓶など、丸みのある素朴な形が特長です。
色の薄い粘土かオークル黄土、白い塗料で、山の形、ひし形、市松模様、点線といった装飾を描きます。
マラケシュ南部の高アトラスの陶器はオークル色が特長です。
アミズミズの陶器は美しく、シンプルな黒の花の綱模様がほどこされています。
カスバのザゴラ地方では、男性が粘土を加工し、足で動く簡単なろくろを使って作ります。
装飾の少ない、シンプルな陶器がほとんど。
タムグルートでは、エナメル加工をした緑色の陶器が作られています。
また、ワルザザートでは、白っぽい粘土に栗の絵を描いた陶器が有名です。
都市部で製作される陶磁器は、装飾品としての要素が強く、アンダルシア・ムーア文化の伝統を受け継ぎ、オリエンタルからインスピレーションを得た花模様をふんだんに使っています。
ポット、取っ手と注ぎ口のついた壷、スープ皿、クスクス用の皿、タジン鍋といった食器で、特に、サレのタジン鍋が有名です。
フェズは、10~11世紀頃から磁器の生産地として知られ、花瓶、蓋つきポット、丸皿、椀といった磁器が作られています。
いずれも形はシンプルで、デザインは比較的似かよっています。
植物、幾何学模様、エピグラフ、さらには羽や船の模様を、十字か放射状に描いた装飾と、白地のエナメルに青い模様のスタイルが特長です。
メクネスは、唐草模様にヤシの木やギザギザの葉模様をほどこします。
サフィでは、白地に青い模様の陶器の他、メタリックの光る陶器も作られています。
フェズやメクネスでは、エナメル加工した緑色の丸い屋根瓦も製造しています。
(写真は1999年撮影)