イヌバラという和名はあまりなじみがないかもしれませんが、その果実、ローズヒップはよく知られていますね。
イヌバラは、英語でロサ・カニーナと呼ばれるバラ科の植物。秋に結実し、赤いローズヒップになります。
学名の「Rosa canina」は「犬のバラ」を意味し、この植物の根が狂犬病の犬に咬まれたときの治療に有用だと、古代ローマ時代の博物学者プリニウス(西暦23~79年)が説明したことに由来するといわれています。
偉大なイランの医師イヴン・スィーナ(西暦 980~1037年)は、著書『医学典拠』の中で、この植物には口内炎を治癒し、歯肉を強化する効果があると説明しています。
また、ローズヒップに高濃度のビタミンCが含まれているため、第二次世界大戦中の英国では、ビタミンの主な供給源としてローズヒップの膨大な収穫を政府が計画したそうです。
この植物は、さまざまな部分に薬効があり、数々の病気の治療に使用されてきました。
たとえば、根は咳、痔、排尿障害に、葉は風邪、インフルエンザ、咳に、枝は尿路結石に、種子は変形性関節症、リウマチ、痛風の治療に役立ちます。
最もよく知られる果実ローズヒップは、ビタミンCとフェノール類が豊富に含まれているため、抗酸化作用があり、複数の病気の予防や治療に使用されてきました。
喘息、気管支炎、風邪などの治療に利用され、抗菌作用と抗糖尿病作用でも高く評価されています。
ローズヒップは昔から、スカンジナビアでマーマレードやスープを作るために使用されてきました。ドイツでは、お茶としてよく飲まれています。
また、ロレスターンやアルダビールといったイランの一部の地域では、伝統的に生のローズヒップをお茶やその他の飲み物、食べ物に用いてきました。
ローズヒップは100gあたり30~1300mgのビタミンCを含み、果物や野菜の中で最もビタミンC含有量が高いことが知られています。
ビタミンC以外にもさまざまなビタミン、ミネラル、ポリフェノール、カロテノイド、脂肪酸などの貴重な成分が含まれています。100gあたり2.9~ 35.2 mg のリコピンも含んでいます。
ローズヒップは、美容業界ではあらゆる種類の製品に配合されています。
ローズヒップの特徴
温暖な地域であればどこでも育つ樹木で、北アフリカ、ヨーロッパ、アジアでよくみられます。茂み、生け垣、乾いた土手、森の端、森林や道路脇に育つ。
イヌバラは、高さ2~3メートルの落葉性多年生の低木で、枝は非常に固いトゲにおおわれています。葉は細かく切りこみが入り、先端に直径4〜6cm、5枚の花びらからなる白かピンクの花が咲きます。
実はローズヒップと呼ばれます。ローズヒップの色は赤からオレンジまでさまざまで、約71%が果皮、29%が種子で構成されています。
学名:Rosa canina L.
科名:バラ科
別名:ロサ・カニーナ
使用部位:実、種、花
開花時期:6月~7月
収穫時期:葉と花は6月~7月、実は9月
有効成分(ローズヒップ):
ビタミン(特にビタミンC)
ミネラル
カロテノイド
トコフェロール
フェノール酸
フラボノイド
タンニン
ペクチン
脂肪酸
精油
アミノ酸
ローズヒップの肌と髪への美容効果
スキンケア効果は、活力促進、栄養補給、保湿など数多く、肌のキメを整え、なめらかにします。
また、抗酸化作用にすぐれ、老化を遅らせ、皮膚細胞の衰弱やシワを防ぎます。
傷んだ髪や弱った髪にも向いていて、髪をボリュームアップし、絹のようななめらかにします。
ローズヒップの肌と髪への使い方
ローズヒップは、生かドライハーブ、精油という形で使うことができます。
ローズヒップの生かドライハーブは、ハーブティーとして飲んだり、熱湯で煎じたインフュージョンや、オイルに漬けたインフューズドオイルを肌や髪につけたりして、使うことができます。
スキンケア
乾燥肌を保護します
シワを予防します
ヘルスケア
傷んだ髪を元気にします
ローズヒップの効能
ローズヒップは、ビタミンCとフェノール類を多く含むため、抗酸化作用に優れ、その他、抗菌、抗糖尿病、抗ガン、抗肥満が認められています。
壊血病(ビタミンC欠乏症)の症状である歯肉炎、歯肉の腫れや出血の治療に効果を示したという報告があります。
また、抗炎症と痛みを緩和する効能があることから、変形性関節症や関節リウマチ、腰痛に対して効果的な植物だとされています。
さらに、副作用を伴うことなく、血圧とLDLを低下させることにより心血管疾患を軽減することができます。