モロッコの美肌の温泉ムーレイ・ヤコブ

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フェズから20キロほどのところにあるムーレイ・ヤコブは、水の聖地です。

美肌の湯として知らる温泉街で、たくさんのモロッコ人が訪れます。

ここには庶民的な銭湯タイプと、高級感あるスパなど、ハマム(アラブ風蒸気風呂)があります。

庶民的なハマムは、地元モロッコ女性でワイワイにぎわってました。

さて、ムーレイ・ヤコブの水の効能は大昔から有名で、次のような伝説があるそうです。


 

ラバトのシェラ宮殿に住む王ムーレイ・ヤコブ・ベン・マンスールが原因不明の病にかかり、体中が化膿してしました。
各地から呼び集めた名医も、王の病を治すことができません。
失望した王は、アトラスの山中に住む魔術師に相談してみると、魔術師は、「フェズ近くの谷から湧き出る熱い温で入浴するように」と教えてくれました。
王は早速その地に向かい、入浴を試みました。驚いたことに、王の体はすぐに癒され、1週間で病気が完治したのです。
王は晴れやかな気持ちで宮殿に戻りました。

ムーレイ・ヤコブは、召使のブラルを息子のようにかわいがっていました。
ブラルは何度も結婚の許可を要求していましたが、王は聞き入れようとしませんでした。病気が直った王は、宮殿に戻った日、ブラルの結婚を許しました。
王が「相手は決まっているのか」と尋ねられたブラルは、邪悪な考えが浮かび、「王の娘ララ・シャフィア様と結婚したい」と答えました。

困惑した王は、実の妹に悩みを打ち明けました。すると彼女は、「私たちが持っているルビーはとても高価で、世界のどこを捜しても、これほど価値のある品はないはずです。それをブラルに見せて、『このルビーに値するものを持ってきたら結婚を許す』と言ってごらんなさい」と助言しました。

王の出した条件に頭を抱えたブラルは、師と仰ぐ聖人シディ・ベル・アッベスに会いに行きました。聖人は、「この箱を持ってワディへ行き、そこに転がっている小石を持ち帰り、王に見せなさい」と答えました。「なんですって? 私をからかっているのですか?」とブラルが驚くと、「私の助言通りにしなさい」と聖人は繰り返しました。

ブラルは河原の小石を箱いっぱいに詰め、主人のところへ持ち帰りました。すると、王が箱から小石を取り出すたびに、それはルビーに変わりました。ブラルのルビーは、王のものより大きく、美しく輝いていました。

約束を果たさなければならなくなった王は、月のように美しいララ・シャフィアの前で悲嘆にくれながら、「娘よ。おまえはブラルのところに嫁がなければならない」と真実を告げました。
これを知った娘は、大きな瞳から涙をぽろぽろ流し、「召使と結婚するぐらいなら、いっそ死なせてください」と声を震わせました。この涙は、今でもララ・シャフィアの泉を湛えています。

王女の落胆をよそに、人々は結婚の準備を始めました。婚礼の前日、不幸な王女は絶望のあまり、ついに帰らぬ人となってしまいました。ララ・シャフィアの魂を天使が山の頂上へ運んだといわれ、そこには現在も彼女の墓が残っています。

その夜、ブラルは花嫁の死をまだ知らずに、ソファでうたた寝をしていました。しばらくして、夢の中に聖人シディ・ベル・アッベスが現れました。聖人が服の左袖を半分開くと、美しく贅沢に着飾った女性が見えました。今度は右袖を開くと、さらに見目麗しい裕福な女性たちが見えました。そして、シディ・ベル・アッベスは語りはじめました。
「よく見なさい。左袖に見たのは、この世で出会う女性たちで、おまえに喜びを与えてくれるだろう。右袖に見たのは、天国で待っている女性たちで、おまえを祝福するだろう」

この夢に胸を打たれたブラルは、結婚をとりやめて、祈祷と瞑想に専念するために砂漠へ帰ってしまいました。
ムーレイ・ヤコブは、愛する娘の死を悲しむとともに、ブラルの夢の話にとても心を動かされました。
「なんということだ。あの男は、財産も何もかも捨てて、孤独な暮らしを選んでしまった。天国で祝福を受けるために、現世の喜びを放棄するというのだ。王である私は、権力を手にしているが、下劣な人間でしかない。さらに富を得ようと野心を抱きながら、空しく死んでいくのだろう。神は私のために、どのような居場所をご用意してくださっているというのか」

こうして、ムーレイ・ヤコブは、富と権力、家族といった全ての財産を捨て、革袋を肩にかけ、旅に出ました。町から町へと巡り、のどの渇きを訴える人に水を売って歩いたのです。ムーレイ・ヤコブは果てしなく歩き回り、最後にシリアで息をひきとりました。

革袋を手にした王は、マグレブ(北アフリカ)各地の水を司る聖者となりました。毎年秋には、ムーレイ・ヤコブを称えてお祭りが開かれています。

<引用:Les Sept Printemps de Fès / Docteur Edmond Secret>

 

モロッコのデトックス水の里シディハラゼム
フェズから12㎞のところにあるシディハラゼムは、名水の里として有名です。名水をポリ容器に入れて帰る人など、たくさんのモロッコ人でにぎわいます。シディハラゼンの水はデトックス効果ばつぐん。利尿作用、神経関節炎、高血圧、痛風、肝臓病を軽減するそう。