介護をするうえで大切なのは、心地よく暮らす生活環境を整えることです。
ところが、介護の現実をつきつけられると、さまざまな葛藤が生じて、快適な生活が失われがちです。これまでの円満な関係にヒビが入ることも珍しくありません。身近な間柄だけに、お互い遠慮したり、わがままになり、複雑な感情が入り混じってしまいます。
お年寄りは介護が必要になった自分に苛立ち、寂しく満たされない気持ちに襲われます。一方、介護者もまた、慣れないことばかりで疲弊し、「なぜ私が?」と疑問や不満を抱えることになります。そして、お互い相手の気持ちを理解できないまま、悶々とした毎日を過ごしてしまうのです。
このようなストレス状態は、やがて痛みや食欲不振といった肉体的な病状となって現れます。介護される側もする側も心身のバランスを失い、状況はますます悪化します。
だからといって、残念ながら、介護にかかわる人々の心理的な苦痛を癒す特効薬は、今のところ存在しません。心身ともに負担の重い介護では、精神的な癒しを目的にした補完的な療法が必要といえます。
その役割を担う自然療法がアロマテラピーです。
アロマテラピーとは、植物の持つ有効成分を利用して行う療法で、その起源は古代にまでさかのぼります。
アロマテラピーのすぐれた点は、人間を包括的にとらえて心と身体のバランスを回復し、健康を維持する点にあります。心に働きかけながら、ストレスによって引き起こされる肉体的不調を改善するのがアロマテラピーといえます。
介護においてアロマテラピーが理想的なアプローチであることは、イギリスやフランスの老人医療の場ですでに導入されている事実からも理解できます。
睡眠障害や徘徊といった症状を緩和する実例も多くみられ、日本でもアロマテラピーを取り入れた施設が増加しています。
アロマテラピーのもうひとつの特長は、芳しい香りを嗅いで身体を癒すことにあります。
また、アロマテラピーのトリートメントのひとつであるマッサージには、リラックス効果があるといわれています。直接人の肌に触れるタッチングは、相手に安心感を与えて心身を癒すと注目されているのです。
介護は辛い。多くの人がマイナス・イメージを抱いているようですが、アロマテラピーがそれを変えてくれるでしょう。アロマテラピーは、高齢者と介護者の双方の生活の質(Quality of Life)を向上させてくれるはずです。
イライラしたり、怒りっぽくなっているときは、やさしい香りで心を鎮めましょう。怒りをそのままにしておくと、ささいなことでカッとなり、相手を傷つけてしまいかねません。
とりあえず休憩時間を作り、香りに身をまかせましょう。
すぐにでも怒りを抑えたいときは、ティッシュペーパーやマグカップによる吸入法が最適です。
花の香りや、樹木の香り、柑橘系が落ち着きを取り戻してくれます。
心を静める精油
スイートオレンジ

ローマンカモミール

サイプレス
サンダルウッド
ジュニパー

ゼラニウム
ティートリー
ネロリ
ビターオレンジの葉
フランキンセンス(乳香)

ベルガモット
マジョラム

マンダリン
ラベンダー

レモン
ローズ
